世界ナンバーワンの日本の小さな会社(2016)レビュー

『世界ナンバーワンの日本の小さな会社』(山本聖,2016)

世界ナンバーワンの日本の小さな会社

この本には,イチローズモルトを造るベンチャーウイスキーが採り上げられています.

内容は,ベンチャーウイスキーがいかにしてトップに登り詰めたのか,その戦略を分析しています.

 

大事な点

この本から得たいポイントは3つです.

  1. ストーリーを描き,共感を得ること
  2. 小さな会社はニッチな市場で勝負し,その中での繋がりを大切にすること
  3. 実際に来てもらうために,環境を整備すること

です.

 

ベンチャーウイスキーの成り立ち

ベンチャーウイスキー創業者の肥土伊知郎(あくといちろう)さん.

今でこそジャパニーズウイスキーを牽引する存在ですが,最初はどん底からのスタートでした.

 

肥土さんの父が経営していた羽生蒸留所が破産.その破産の事後処理と原酒の保存を担ったのが肥土さんでした.

特に原酒の保存は400樽にも及び,なんとかして郡山の笹の川酒造が引き受けました(ちなみに現在,笹の川酒造は安積蒸留所をオープンさせています).

その原酒の商品化のため,肥土さんが社長となってベンチャーウイスキーが誕生したのです.

 

ストーリーを語る,バー巡り

肥土さんは2000軒のバーを巡りながら,羽生の原酒を語りました.

「(自分の)ウイスキーを評価してくれるのはバーテンダーさんだと思い至り,”バーめぐり”をはじめました.」

自分の味覚の訓練であり,同時に営業でもあったわけです.

バーテンダーさんの発信や口コミで,イチローズモルトが拡まっていきました.

そうしたニッチな繋がり(バー同士の繋がり)を大切にすることで,ニッチな市場(バー,ジャパニーズウイスキー)でトップの酒となっていきました.

 

イチローズモルトの「カードシリーズ」は,トランプの柄がラベルに並んでいますが,これもバーでの見栄えを意識してのものでした.

 

秩父に蒸留所をつくる

お酒を造り続けることを考えた肥土さんは,生まれ故郷の秩父に蒸留所を建設.

役所の人にもこれまでのストーリーを語り,心を動かしました.

蒸留所の個性はオール秩父.原料から設備までオール秩父にこだわる酒造りは,現在も続いています.

 

そんな肥土さんの夢は「30年物の秩父のウイスキーを飲むこと」.

その夢の実現に向けて,現在も挑戦し続けています.

 

ニッチ・トップ戦略

この本の第3章には,ベンチャーウイスキーなどの事例を基にしたニッチ・トップ戦略が書かれています.

ここに書かれていることができれば苦労はないのですが,読む価値は十分にあります.

例えば「地元を大切にし,団体戦で勝負」.

地元の支援があれば,より楽に活動を広げることができるということです.特に地方では何かアピールするものが欲しいですから,ウイスキー事業なんかは地元のPRにうってつけです.どちらもwin-winとなります.

 

おそらく一番難しいのが「周囲が共感できる夢を描く」ことです.

これがないと地元も動きませんし,なにより事業が進んでいきません.

ここをしっかりできるかが,ポイントになるんだろうと思います.

 

まとめ

ニッチ・トップ戦略に興味がなくても,ベンチャーウイスキーの話だけで十分に楽しめる一冊です.

続々と誕生しているクラフトウイスキー蒸留所を見るための前例,ひとつの視点として,読んでみてはいかがでしょうか.

 

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